うちの店の原価率を全部出します|56品の実データで見る「揃えない」値付けの型

経営ノウハウ公開: 2026-08-23

飲食店の原価率の話は、どこを読んでも「30%が目安」で終わります。ですが実際の店のメニュー表が、全品30%で組まれていることはまずありません。私の店もそうです。

沖縄で3店舗(イタリアン・ビアバル・パスタ業態)を経営しています。この記事では、うちが実際にお客様へ出しているメニューの売価と原価率を、隠さずに出します。数字を見てから「なぜそう組んでいるか」を書きます。

先に断っておきます。これは1社のデータで、業界平均ではありません。立地も業態も仕入ルートも違えば数字は変わります。参考にしてほしいのは数字そのものではなく、数字の散らばり方のほうです。

まず数字から:原価率は10%から66%まで開いている

原価データが揃っている2店舗、合計56品。その両端と中間を抜き出すとこうなります。

品名売価(税抜)原価率
ビアバルオールフリー300円66%
ビアバル生ビール350円60%
ビアバル生牡蠣 3個セット1,140円58%
イタリアン魚介のペスカトーレ1,300円34%
イタリアンマルゲリータ900円30%
イタリアン自家製ボロネーゼ1,050円25%
イタリアン本日のおすすめパスタ1,250円20%
ビアバル枝豆の炭火焼き350円13%
イタリアンペペロンチーノ680円13%
ビアバルおかわりポップコーン350円10%

同じ店の中で6倍以上の開きがあります。原価率だけを見れば、66%のオールフリーも60%の生ビールも「即刻やめるべき商品」です。ですがうちは1度もやめていませんし、これからもやめません。

ビアバルのほうは、店全体の単純平均で31.2%、イタリアンのほうは24.8%。平均に意味はほとんどありません。大事なのは、その平均がどういう散らばりでできているかです。

型1:1皿ごとに「係」を決める

うちはメニューの1品ずつに役割を割り当てています。呼び方は単純に「係」です。

  • 利益をつくる係(原価率20%以下):ポップコーン10%、枝豆13%、ペペロンチーノ13%
  • 標準(21〜35%):数のうえではここがいちばん多い
  • 看板・集客の係(36%以上):生ビール60%、生牡蠣58%

ビアバルで原価率60%の生ビールを出しているのは、ビールで人を呼んでいるからです。ビール単体では儲かりません。でもビール目当てで来た人が、原価率10%のポップコーンや13%の枝豆を一緒に頼みます。集客する皿と、利益を出す皿は、別の皿でいい。これがうちの考え方です。

逆に、全品を30%に揃えた店を想像してみてください。名物がなくなります。安い皿もなくなります。お客様から見ると「普通の店」になって、選ぶ理由が消えます。揃えることは、実は何も設計していないのと同じです。

型2:単品ではなく、店の合計で着地させる

では何を見ているかというと、店全体のFL比率です。食材費(F)+人件費(L)が売上の55%以内に収まっているか。うちが新しい店を出すときも、既存店を立て直すときも、これを絶対条件にしています。

この見方に立つと、原価率34%の皿は「高すぎる」ではなく「その役割の皿」になります。単品の原価率は、FLという合計をつくるための部品にすぎません。詳しくはFL比率の記事に計算機付きで書きました。

型3:原価を下げる前に、売価が正しいかを見る

原価率は割り算なので、下げる道は「原価を下げる」と「売価を上げる」の2本あります。多くの店が①だけを見ます。ですが材料を落とせば皿がやせて、客足のほうが先に減ります。

うちは先に売価を疑います。原価が上がっているのに売価を据え置くのは、黙って自分の粗利を削り続けているのと同じだからです。1皿の原価と原価率は原価計算の記事の計算機でその場で出せます。

なぜ数字を出すのか

正直に言うと、原価率を公開している飲食店はほとんどありません。出したくないのが普通です。

それでも出しているのは、数字を隠したまま「うちのやり方」を語っても、誰の役にも立たないと思っているからです。うちはスタッフにも経営数字を全部共有しています。原価を知らない人に「ロスを減らせ」と言っても伝わらないからで、それと同じ理屈です。

もうひとつ。うちの数字が誰かの店にそのまま当てはまることはありません。だから出しても困りません。困らない代わりに、「1社が実際にどう組んでいるか」という情報は、平均値よりずっと役に立つと思っています。

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3店舗目のPASTAの日は、いま原価の採取中で数字が埋まっていません。揃っていないものを揃ったふりで載せないのもうちの方針なので、埋まり次第この資料を差し替えてお送りします。

仕入先名と仕入単価は載せていません(取引先の情報のため)。載せているのは売価と原価率までです。

まとめ

  • うちの原価率は10%から66%まで開いている。揃えないことが設計
  • 皿ごとに「利益をつくる係/標準/看板・集客の係」を決める
  • 見るのは単品の率ではなく、店全体のFL55%
  • 原価を落とす前に、売価が正しいかを先に疑う
  • この数字は1社のもの。平均値としては使えないが、型としては使える

まずは自分の店の、いちばん出ている5品の原価率を並べてみてください。全部同じような数字だったら、そこが伸びしろです。

この記事を書いた人:シェフキヨ(宮城清兵)
元イタリアンシェフ。沖縄県で株式会社クッチーナ・キヨを経営し、イタリアン・ビアバル・パスタ業態の3店舗を運営中。現場で使える経営ノウハウと、AIを経営に組み込む実践記録を発信しています。詳しいプロフィール
🍴 沖縄で営業中:CucinaKiYO(那覇・銘苅)/BEER BEAR(那覇・おもろまち)/PASTAの日(浦添バークレーズコート)— 一緒に働く仲間も随時募集しています(お問い合わせ
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