AIに新事業を8つ作らせたら、私の一言で全部止まった話
結論から書きます。
AIに新しい事業を8つ作らせました。売上は0円です。外に売れると言えるものは、0件でした。
止めたのは私です。言ったのは5行くらいです。
何を作らせたか
沖縄で飲食店を3つやっています。もともとはイタリアンのシェフでした。今年の春から、会社の事務や数字の集計をAIに任せていて、社内では「秘書」と呼んでいます。
この秋、その秘書に「店の外で稼げる事業」を考えて、作るところまでやってもらいました。出てきたのは8つです。
- 飲食店向けの計算ツール
- 地域の業者さがしのサイト
- 飲食店の困りごと調査
- 毎月1枚の数字レポート(月9,800円)
- 請求書の写真から原価表を作る代行
- 原価と回転を体験する60秒のゲーム
- 補助金のカレンダーと、新しく開業した店のリスト
- 表計算のテンプレート
8つとも、試作品か、売れるかを確かめる仕組みまでできています。
数字レポートは自動のテストを45件通っていました。税理士でないと言えないことを書いたら、出力ごと止まる検査も入っていました。県の公開データから案内先を100社選んで、封書を送る準備も済んでいた。費用の上限は4万円。あとは私がYESを押すだけでした。
止めた時に言ったこと
送る前に、レポートの見本を見ました。売上、客数、客単価、FL比率、曜日と時間帯の弱いところ、来月の打ち手が3つ。きれいにまとまっていました。
そこで出た言葉がこれです。
「9800円でこんなの買う人いるかな」
「どれぐらいの回収になるのかっていう説明がない」
「数字を出して、そろえて返すだけって感じ」
「原価率もわかんないからね」
「刺身3点盛りの分量ってかわかんないから」
数字を並べ直してもらっても、店の利益は1円も増えません。利益を動かすには、どの料理がいくらで作れているかが要ります。刺身3点盛りに何グラム乗っているか。それが分からないまま「来月の打ち手」を書いても、当たるかどうかは運です。
正直に書くと、うちの店でも料理ごとの原価はほとんど揃っていません。現場に分量を入れてもらう表を9月に始めて、1か月近くたっても、売上で見て2%にも届いていない。AIの仕組みを持っているうちでこれです。よその店に「原価率を出してください」と頼む商品が回るはずがない。
一言から基準を作ったら、0件になった
秘書は私の言葉を、売る前の合格基準に直しました。
- 払うといくら戻るか。 値段に対して、買った人の利益がいくら、何か月で戻るかを数字で書けるか。
- 利益に効くか。 読んだ後に、何を変えていくら儲かるかまで言えるか。
- データがすぐ揃うか。 買う人が今日出せるデータだけで作れるか。
あとから2つ足しました。1店で月5万円以上の利益が動くか。自分の店で先に効果を測ったか。
この基準で、候補を全部採点し直しました。20の案のうち、証拠付きで全部通ったものは0件です。
数字レポートは3つとも×。原価表の代行は、値段を付けると人が確認する手間で、1店あたり毎月赤字になる計算でした。業者向けの掲載や補助金の冊子は、買った人が「いくら得したか」を誰も書けませんでした。
1つだけ残ったもの
紙の上で残ったのは「値上げの設計」だけでした。
理由は単純で、原価率を知らなくても判断がぶれないからです。売値を5%上げた時、利益が変わらないところまで許される数量の減りは、原価率が20%なら約6%、40%でも約8%。ほとんど同じです。刺身3点盛りの原価が分からなくても、上げてよいかは決められる。
ただし、うちには「値上げして粗利が増えた」という実績がまだ1件もありません。前に飲み比べのセットを4割ほど上げた時は、出る数が半分以下になって、その品の粗利は2割近く減りました。
だから外には売りません。11月から、自分の3店でいくつかの品を少しだけ上げて、8週間測ります。負けたら外にも出さない。
学んだこと
AIは作るのが速い。8つの事業の試作が、ほぼ並んで出てきました。テストも検査も、人がやるよりずっと丁寧です。
でも「誰が、いくら払って、いくら得するか」は、作る前に決めておかないといけない。そこが抜けていると、よくできた試作品がテストを45件通って、誰にも買われないまま積み上がります。
これは自分の店でも同じです。これからは、業者から何かを勧められた時に、最初にこう聞くことにします。
「払うと、いくら戻りますか。何か月で戻りますか」
答えられない商品は、どんなによくできていても買わない。今回は、自分の会社の商品にそれを言っただけです。
次にやること
AIの仕事は止めていません。基準を通らないものは外に出さない、と決めただけです。
結果はまたここに書きます。売上が0円のままなら、それも書きます。